
映画『アウトレイジ』は、北野武監督の原点回帰ともいえる過激なバイオレンス描写で、今なお多くの映画ファンを魅了し続けています。
この作品に出演している芸人マキタスポーツさん。彼の出演シーンは短くも強烈なインパクトを残しました。
特に、あまりにも過激シーンである菜箸を耳に突き刺される描写は、見る者に大きな衝撃を与えました。
当時の彼は俳優という意識は全くなく、さらには撮影当日に二日酔いだったという驚きのエピソードも語られています。
この記事では、そんな彼がなぜこの作品に出演し、いかにしてあの強烈な役を演じたのか、その舞台裏に迫ります。
この記事でわかること
- マキタスポーツさんが演じた役柄と出演の経緯
- 北野武監督への特別な思いや撮影時の心境
- 『アウトレイジ』出演がその後の俳優活動に与えた影響
- 映画全体の過激シーンやその後のキャリアの軌跡

Contents
アウトレイジにマキタスポーツが出演した理由とは

- マキタスポーツの役柄と衝撃のシーン
- 菜箸を耳に突き刺されるシーンの裏側
- 撮影当日に二日酔いだった?
- 北野武監督との関係性について
- 撮影時のマキタスポーツの心境
マキタスポーツの役柄と衝撃のシーン

マキタスポーツさんが映画『アウトレイジ』で演じたのは、麻薬の取引に手を染める中華料理店の店主です。
物語の中盤で登場するこの役は、彼が俳優として脚光を浴びるきっかけとなった「苦役列車」よりも前の、まだ芸人としての仕事が思うようにいかなかった時期の出演でした。
彼は、裏で麻薬を扱う悪党でありながらも、表向きは何食わぬ顔でラーメンを作るという、二面性のあるキャラクターを演じています。
しかし、ヤクザとの抗争に巻き込まれ、非情な拷問を受けることになります。
作中で彼が演じたこのキャラクターは、見る者に忘れられないインパクトを与えました。
その理由は、彼が受ける拷問シーンがあまりにも残虐で、しかもそれが中華料理店という日常的な空間で行われるからです。
このシーンは、北野武監督の作品に共通する、日常に潜む暴力の不条理さを象徴する場面の一つと言えるでしょう。
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菜箸を耳に突き刺されるシーンの裏側

マキタスポーツさんが演じた中華料理店の店主は、椎名桔平さんが演じる大友組の若頭・水野から、情報を聞き出すために壮絶な拷問を受けます。
その中でも特に強烈なのが、菜箸を耳に突き刺されるシーンです。
この描写は、視覚的な痛みを感じさせるだけでなく、身近な道具が凶器に変わるという日常と非日常のギャップが恐怖を増幅させました。
このシーンについて、マキタさん自身が後日語ったところによると、撮影時に特殊効果や演出を駆使して撮影されたもので、実際に耳に菜箸が突き刺さっているわけではありません。
しかし、そのリアルな描写の裏側には、椎名桔平さんの演技力と北野組の緻密な演出があったのです。
多くの視聴者が「本物ではないか」と錯覚するほどの迫力は、俳優陣の熱演と、見る者の想像力を掻き立てる監督の演出の賜物と言えるでしょう。
北野武監督は、以前の作品『3-4X10月』でも箸を使った暴力シーンを描いています。
監督は、日常生活にあるものが凶器に変わる、その非日常的な状況を描くことを好んでいるのかもしれません。これも監督の作家性の一つと言えるでしょう。
イヤホン買い替えたので耳かき音ASMR聴いてみたら1分ぐらいでアウトレイジの耳に菜箸突っ込まれるマキタスポーツ思い出して駄目だった笑
— Cleaner (@MARINES1911) March 17, 2024
聞こえねぇのかコノヤロー!! pic.twitter.com/aEeVbhyLc5
撮影当日に二日酔いだった?

彼は、北野武監督の作品に出演することへの過度な緊張から、撮影前夜に大量にお酒を飲んでしまい、ひどい二日酔いの状態で撮影現場に臨んだそうです。
多くの俳優が、大御所である北野監督の現場では最高のパフォーマンスを発揮しようと万全の準備を整えるでしょう。
しかし、マキタスポーツさんは当時まだ役者経験が乏しく、緊張からくる現実逃避としてお酒を飲んでしまったと言います。
彼にとって、この仕事は「武さんの事務所の若手として使ってもらった」という意識が強く、純粋に役者として挑むというよりは、たけしさんへの畏敬の念からくる重圧の方が大きかったのかもしれません。
その結果、監督から直接簡単なアドバイスをもらった記憶もほとんどないほど、極度の緊張状態にあったと語っています。
しかし、このような状況下であっても、彼は見事に役をこなし、あの強烈なシーンを演じ切りました。
そのプロ意識と、短期間で役に入り込める彼の才能がうかがえるエピソードです。
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北野武監督との関係性について

マキタスポーツさんは、北野武監督に対して並々ならぬ敬意と畏れを抱いていることが、複数のインタビューで語られています。
彼は、たけしさんを尊敬するがゆえに、「迂闊に近づいてはダメ」だと考えていたそうです。
そのため、同じ事務所(オフィス北野)に所属していた時期がありながらも、たけしさんとは師匠と弟子の契りを交わしていないと明かしています。
これは、たけしさんに「殿」と呼ぶのは、正式に弟子入りした者だけであるというルールを尊重しているためです。
『アウトレイジ』への出演は、彼自身が積極的に役者を目指していたわけではなく、たけしさんからの一言がきっかけでした。
当時の事務所社長は、若手芸人を安易に監督作品に出演させることに反対していたのですが、キャスティング担当者がマキタさんの名前を挙げたところ、「いいじゃない、マキタで」とたけしさんが言ってくれたことで出演が実現したのです。
この経緯から、マキタさんにとって、この出演はたけしさんへの深い感謝と、監督の作品に携われることへの喜びを感じる、特別な機会であったことが分かります。
撮影時のマキタスポーツの心境

撮影当時のマキタスポーツさんは、自身を役者だとは全く思っていませんでした。
むしろ、ようやく芸人としての仕事が上向いてきた時期であり、芸人の道で頑張っていこうと考えていた矢先に舞い込んできた俳優の仕事に、正直なところ「邪魔だな」と感じていたと告白しています。
特に、同じ時期にオファーが来た映画『苦役列車』の仕事に関しては、芥川賞作品と聞いていながらも内容をよく知らず、「貝を拾っている労働者で、歌手になりたいオジサン役」だと聞いて、「それイヤだなあ」と断ろうとしたほどでした。
しかし、当時のマネージャーに「これは絶対にやった方がいい」と強く勧められ、最終的には「曲を作らせてくれるなら」という条件付きで出演を承諾しています。
このエピソードからも、当時の彼の主軸が完全に「芸人」や「ミュージシャン」にあったことが分かります。
彼は、目の前の仕事をこなしつつも、心の中では芸人としてのキャリアを築くことに集中していたのです。
そう考えると、『アウトレイジ』での演技は、役者という肩書きへの意識がないからこその、ある種の無垢なパフォーマンスであったとも言えるのかもしれません。
アウトレイジから俳優マキタスポーツの転機へ
- 芸人として不遇期に来た映画オファー
- 映画「苦役列車」での新人賞受賞
- 「アウトレイジ」に出たことで、その後の俳優業にどう影響したのか?
- 作中の過激シーンは他にどんなものがある?
芸人として不遇期に来た映画オファー

マキタスポーツさんが俳優の仕事のオファーを受けたのは、まだ芸人として大きな成果を上げる前の時期でした。
2010年当時、彼は40歳を迎えていましたが、芸人としては「全く仕事がなかった」と本人が語っているほど、不遇期にありました。
その中で、キャスティング担当者が名前を挙げ、北野武監督が「いいじゃない」と即決したことで『アウトレイジ』出演が実現しました。
つまり、芸人として知名度が上がってきたから呼ばれたのではなく、むしろ 売れる前の偶然の抜擢 だったのです。
映画「苦役列車」での新人賞受賞

映画『アウトレイジ』に出演した2年後、マキタスポーツさんは映画『苦役列車』で第55回ブルーリボン賞新人賞と第22回東京スポーツ映画大賞新人賞を受賞しました。
この受賞は、彼の俳優としての才能が広く認められた証です。
しかし、彼はこの受賞に対して、正直なところ「照れくさかった」と語っています。
受賞当時、彼は43歳。一般的に「新人」と呼ばれる年齢ではなかったからです。
また、彼はこの作品の撮影も『アウトレイジ』と同様に、特に達成感を感じることはなかったと言います。
役作りのために体重を増減させたり、髪を剃ったりといった身体的な努力を伴う役ではなかったため、「ただ、なんとなく労働者の格好をして、セリフを言っていたら終わった」という感覚だったからです。
これは、彼の謙虚な姿勢と、芸人としての「ウケる」ことを追求する体質からくるものかもしれません。
しかし、映画評論家や観客は、彼の自然体でリアリティのある演技を高く評価しました。
彼の演技には、作り込まれたものではない、本物の生活感や哀愁がにじみ出ており、それが「新人賞」という形で評価されることになったのです。
「アウトレイジ」に出たことで、その後の俳優業にどう影響したのか?

マキタスポーツさんにとって、『アウトレイジ』への出演は、その後の俳優人生の扉を開いたと言っても過言ではありません。
この作品での強烈なインパクトが、彼の存在を多くの映画関係者に知らしめることになりました。
実際、『アウトレイジ』出演後、彼は様々な人気作品に出演するようになります。
『闇金ウシジマくん』シリーズや、大河ドラマ『おんな城主 直虎』、ドラマ『きのう何食べた?』など、話題作に次々と出演し、今や俳優としての地位を確固たるものにしています。
彼が演じる役柄は、その多くが脇役でありながらも、物語に深みを与える個性的なキャラクターばかりです。
これは、彼の芸人としての経験や、スクリーン上での唯一無二の存在感が高く評価されている証拠です。
当初は乗り気でなかった俳優業が、今では彼の重要な活動の一つとなっています。
『アウトレイジ』からマキタスポーツさんの出演作品の広がり
作品名 | 公開・放送年 | 役柄 |
---|---|---|
『アウトレイジ』 | 2010年 | 中華料理店主 |
『苦役列車』 | 2012年 | 高橋岩男 |
『この世で俺/僕だけ』 | 2013年 | 伊藤博(主演) |
『闇金ウシジマくん Part2』 | 2014年 | 村井 |
『ルーズヴェルト・ゲーム』 | 2014年 | 長門一行 |
『忍びの国』 | 2017年 | 長野左京亮 |
『きのう何食べた?』 | 2019年〜 | 三宅祐 |
地面師たちのマキタスポーツ、アウトレイジのマキタスポーツ、孤独のグルメのマキタスポーツ。 pic.twitter.com/xN4BWMdPR3
— TR (@ta_s301) October 12, 2024
作中の過激シーンは他にどんなものがある?

『アウトレイジ』は「全員悪人」というキャッチコピーの通り、マキタスポーツさんのシーン以外にも、数々の過激なバイオレンス描写で知られています。
これらの描写は、北野武監督が事前にメモしておいたアイデアに基づいていると言われています。
例えば、以下のようなシーンが挙げられます。
- 歯医者のドリル: 村瀬組の組長(石橋蓮司)が歯医者で治療中に、大友(ビートたけし)によって口内をドリルで荒らされるシーンです。日常の空間が一変して拷問の場になる恐怖が描かれています。
- 舌を噛みちぎる掌底: 大友を裏切った池元組長(國村隼)が、大友に舌を噛みちぎられるシーンです。舌を出した瞬間に顎に掌底を打ち込まれ、自らの力で舌を断ち切るという、見るだけで痛みが伝わってくる描写です。
- 車での首折り: 大友組の若頭・水野(椎名桔平)が、車にロープで首を繋がれ、車が急発進することで首が折れる凄惨なシーンです。これは、組織に裏切られ、非業の死を遂げる様子を象徴的に描いています。
これらのシーンは、ただ単に暴力を描くのではなく、登場人物たちの非情さや、ヤクザ社会の理不尽さを際立たせる役割を果たしています。
マキタスポーツさんのシーンも、こうした物語全体の冷酷な世界観を構築する重要な要素の一つだったのです。
まとめ:『アウトレイジ』 マキタスポーツ【中華屋店主】が転機に?舞台裏を解説
本記事では、映画『アウトレイジ』におけるマキタスポーツさんの出演に焦点を当て、その知られざる舞台裏を深掘りして、改めてマキタスポーツさんの多才さに驚かされました。
お笑い芸人として苦労を重ね、ようやく仕事が軌道に乗り始めた40代で、期せずして俳優としての才能が開花する。
そのターニングポイントとなったのが、他ならぬ北野武監督の『アウトレイジ』だったというのは、運命的なものを感じずにはいられません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
